家庭教師の柔軟性
スランプを脱出できないときにはどうするか。
そういう場合には、当座の勉強計画から、はじめての分野や新しい問題を外してしまう。
つまり、以前に勉強したテキストで記憶があいまいな部分や、以前に解いて間違えた問題を復習する。
あるいは、前で書いた聴覚記憶法の録音テ−プが手元にあったら、それを聴くのもよい。
スランプのときは、テキストを日で読むよりも、耳で聴くほうがラクなのだ。
なぜなら、目を左右に動かすときは自分の意志が必要だが、鼓膜は自分の意志に関係なく振動するからだ。
それに、前に勉強したことの復習にもなる。
スランプのときは復習11||これが鉄則だ。
脳科学的見地からみた要領のよい勉強法「要領の悪い人」は、脳科学的に間違った勉強法をしている!勉強不足なら、試験で点数が取れなくて当然だ。
しかし、勉強時間は多いのに試験で点数が取れない人もいる。
前に紹介したAさんなどは、まさにこのタイプだと思う。
先ほどは「社会人」と書いたが、実はAさん、並戸通に会社勤めをしていたのでは行政書士試験を突破するに足る勉強時間が確保できないとまで思い詰め、ついに会社を辞めて、時間の自由が利くフリ−タ−に転じたそうだ。
いわば、「行政書士浪人」。
独身とはいえ、すでに三〇歳に近い。
その熱意たるや、凄まじいものがある。
行政書士というのは、コミックスやTVドラマの「カバチタレ!』で一躍脚光を浴びた資格である。
官公庁に提出する細かな申請書等を、種々、企業になり代わって作成しなければならないので、「広く」法律に通じていなければならない。
しかし、資格と資格の境界があって、弁護士業務まで立ち入ることはできない。
なのにAさんは、あたかも司法試験を目指しているかのごとく、微妙な法解釈にまでこだわるほど、「深く」法律を勉強しようとしている。
ここに、すでに考え違い、というか無理があるのではなかろうか。
「広く・浅く」なら対応できても、「広く・深く」となると大変だ。
最新版のテキスト、問題集を毎年何種かずつ買い求めて独習するほか、予備校の集中ゼミに通ったこともあるという。
それなのに過去に三回、試験に失敗している。
行政書士試験が行なわれるのは毎年一〇月末。
この原稿を書いている時点では第四固めの試験を目指し、追い込みにかかっているところだろう。
好結果を祈るばかりである。
資格試験を目指す人のなかには、Aさんのようなタイフが少なからずいる。
そういう人は、「要領が悪い」の一言で片付けられてしまうことが多い。
では、このほか要領とはなんだろうか。
参考書の覚え方、使い方が下手、復習を軽視している、問題集をうまく活用できていない時間の使い方が下手とまあ、いろいろあるだろうが、これらをひっくるめて「要領が悪い」とは、「脳科学的に間違った勉強法」なのである。
そして、自分が脳科学的に間違った、非効率な勉強をしているということに当人はまったく気づいていない。
だから、資格試験に合格できないのは、会社勤めをしていて勉強時間が足りないからだと、短絡的に考えたりする。
一方で、サラリーマンとしてきっちり仕事をこなしながら、限られた時間内で勉強をし、試験に合格している人はいっぱいいる。
両者の差がどこにあるかといえば、頭の出来云々よりは、勉強法や勉強計画の内容のほうが大きい、と私は思う。
ここでは、前述べた内容を踏まえて、要領よく勉強効率を上げるノウハウを、脳科学的見解を織り交ぜながら、掘り下げていくことにしたい。
テキストと問題集、要領のいい選び方・使い方大人の場合は丸暗記より、ヘリクツで覚えたほうが効率がいい。
子どもと大人では、脳の学習プロセスが異なる。
たとえば、幼児が日本語を覚えるときは、当然ながら文法などにお構いなしに、見たまま聞いたままを丸暗記する。
これに対して、たとえば大学生が第二外国語としてドイツ語を覚えるときには、最初に文法をしっかり理解してから、読み書きを勉強する。
前者を「機械的記憶」、後者を「論理的記憶」といい、前者から後者に移行する時期は1歳kらである。
大学生の第二外国語にかぎらず、中学の英語教育でも、日本では「話す・聞く」より「読む・書く」を優先して、文法から入る。
年齢的に、すでに機械的記憶→論理的記憶へと移行しかかっている時期ではある。
脳科学的に無理はないわけだが、国際化がすすんだなかでも英語はじめ外国語の習得に苦手意識を持つ日本人が多い理由のひとつは、このあたりに潜んでいるのかもしれない。
ともあれ、大人は丸暗記が苦手で、意味付けをハッキリさせながら覚えようとする。
実際、いろいろな人に聞いてみると、「そのほうが覚えやすいから」という人が多いが、これには脳科学的な裏付けがあるのだ。
脳の神経細胞が、二〇歳ころを境に減少に向かうことは前述したとおりだ。
社会人になってからの勉強で丸暗記しようとしても、一〇代のころのようにはいかなくて当然なのである。
だから、一つひとつを覚え込もうとするのではなく、体系づけて論理的に記憶していくのが脳科学的に正しい。
しかし、すべてがすべて、論理的であるとはかぎらない。
もし意味付けがハッキリしない場合には、自分勝手なヘリクツで暗記する子もある。
たとえば、「老人が、最低血圧より最高血圧のほうが上昇度が大きいのは、高齢だから」といった具合に。
高齢だからというのは私の考えたヘリクツだ。
最高血圧の「高」と、高齢の「高」を語呂合わせにしただけ。
ちなみに、高齢者の最高血圧が高い理由は、動脈硬化のため毛細血管の血管抵抗が大きいため。
ほら、まじめに考えるとワケがわからないでしょう?だから、暗記しやすいようにヘリクツを考えただけなのである。
数百ページに及ぶ分厚い本もあれば、二〇〇ページそこそこの薄い本もある。
都心部にある大きい書庖には資格のコーナーができており、そうした本が平台や棚にずらりと並んでいる。
同じジャンルで分厚い本と薄い本があったとして、あなたなら、どちらの本を選択するだろう?「迷わず分厚い本を選ぶ」という人が結構多いと思う。
はたして、それは正しい(要領のいい)選択なのか。
薄い本のメリットを見落としているような気がする。
薄い本は、合格に必要な知識だけがコンパクトに編集されているはずである。
したがって、時間をやりくりしながら勉強している多忙なビジネスマンには、薄い本が向いている。
ただし、薄い本はすべての点で、分厚い本に優るわけではない。
最大の欠点は、コンパクトにまとめることを眼目に編集しているので、要点や結論重視で、プロセスの解説文がどうしても不足がちなことだ。
だから、薄い本だけで勉強すると、理解できない部分があちこちにできてしまい、ワケもわからず丸暗記しなければならない羽目になる。
ところが、大人は機械的暗記が苦手だから、「苦労がなかなか報われない」という結果に終わりがちだ。
一方、分厚い参考書は、論理的に理解するのにはよいが、それほど大量には覚えられるものではない。
最初から分厚い本で勉強しようとすると、相当な時間がかかる。
それでは、忘却曲線にもとづく「翌日」「一週間後」「一か月後」の復習布日行)だって、そのうちおろそかになってくる。
分厚いテキストは用い方を誤ると、あなたの貴重な時間をどんどん奪ってしまう。
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